それぞれの「わりかん」

劇作家 津々見俊丈

私は、大阪生まれですが、現在東京で暮らしています。そしてもう、東京暮らしの方が大阪暮らしより長くなってしまいました。両親は健在で生まれた家もありますので、一年に一度くらいは大阪に帰りますが、時々、両親ともいなくなったら大阪には帰らなくなるのかなぁ、と考えてせつなくなることがあります。

母方の祖父は湯浅の生まれで、毎年和歌山で夏休みを過ごしました。毎日海で泳いで、帰ってきたらスイカ、夜は花火。そんな夏休みが小学校四年生くらいまでは続いたでしょうか。あれ以来なかなか和歌山を訪れる機会がありませんが、我が家のアルバムに残る湯浅はどのくらい残っているでしょうか。昔から一部の都市部を除いては生まれた土地で一生過ごすことは簡単ではありません。湯浅生まれの祖父も、就職を機に大阪へ行き大阪で生涯を終えました。祖父はどんな気持で夏休みに孫たちを自分のふるさとへ連れて行ってたのでしょう。子供の頃は考えもしなかったことですが、きっと自分の宝物を紹介するような誇らしい気持だったのではないでしょうか。

「わりかん」の原作は大阪弁で書かれたものですが、今回の上演にあたり和歌山弁に翻訳していただきました。言葉は文化です。その土地の言葉で上演されることによってより身近に、「わりかん」を感じていただきたいと思ったからです。

どうぞ、それぞれの「わりかん」をお楽しみ下さい。

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「わりかん」に出会って

演出 山入桂吾

戯曲「わりかん」と出会ったのはいつだったのだろう。『演劇会議』という雑誌に掲載されたのを読んでから、いつか上演してみたいと思っていた。父の死後、一人残された母の介護をめぐって東京から一時帰ってきた息子、嫁いだ娘、その夫、神戸に住んでいる親戚のおば(正確には父のいとこ)との間で繰り広げられる絶妙な会話のやりとりにひかれた。

今回上演したい旨を作者の津々見さんに申し出たところ、「和歌山弁でやってみたら?」とアドバイスいただき、原作の大阪弁から和歌山弁への「翻訳」に挑戦してみた。普段何気なく使っている言葉の微妙なニュアンスや出演者の言語習慣の違いなどに驚きながらも楽しく脚本作りができた。あとはそれを生きた言葉でやりとりできるか、である。約三ヶ月の稽古の成果や如何に。その判断は見ていただいた皆さんにお任せしたいと思う。

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キャスト

樫尾裕美
奥野昌紀(劇団ノスタルジア)
山下悠生
植西一義
城向博子

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スタッフ

作:津々見俊丈
演出:山入桂吾
舞台監督:楠本幸男
装置:板坂晋治
装置製作:演劇集団和歌山
照明:勝本昌宏・水口広平
衣装:城向博子
メイク:樫尾裕美
音響:山本真司
小道具:城野周三
制作:鎌田昌信・下崎 浩

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作家プロフィール

津々見俊丈(つつみとしたけ)劇作家・演出家

1961年 大阪生まれ。テアトル・エコー付属養成所にて俳優の学びをしながら劇作も手がける。養成所卒業にあたり、劇作家に転身。以後、同養成所にて後輩達の育成に係わる。卒業公演への作品提供、作品づくりの指導など、多岐にわたって俳優養成に係わる。1995年まで同養成所講師。他に尚美学園講師など。養成所閉鎖後は、劇作家・演出家として東京を中心に活動。今回上演される「わりかん」は、2000年 関西芸術座の戯曲公募で佳作入選。2000年5月同劇団にて初演。その後、2004年 黒石演劇研究会にて上演。今回が3回目の上演となる。

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公演日程

2007年
9月22日(土)午後2:00〜/午後6:30〜
9月23日(日)午後2:00〜/午後6:30〜
和歌浦小劇場

第40回和歌山県民文化祭参加

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