追悼・城野周三

城野周三 本劇団、劇団員の城野周三さんが2013年10月16日、心不全のため、急逝されました。59歳でした。

 城野さんは20代前半の頃、一時劇団活動に参加し、「バラの刺青」(テネシー・ウイリアムズ作・栗原省演出 1977年)ではアルバーロ役で出演しました。コミカルな役柄でしたが、印象に残る演技でした。その後長らくのブランクのあと、劇団の舞台に客演をお願いすることがふえ、「操縦不能」(楠本幸男作・演出1995年・再演)「沓掛時次郎」(1990年)などに出演していただきました。2000年代に入ってからは、ほぼ毎回出演をお願いし、自ら「端役組合会長」を名乗り、舞台を支えてくれました。2005年には、「和歌山にこの劇団は貴重だ、支えてていかねば」と劇団入団を表明してくれました。入団後は、役者としてはもちろん、小道具係としても活躍してくれました。城野さんは歴史に興味があり、特に歴史劇上演の際には、作品の背景を綿密に調査し、ていねいに小道具を作り上げました。役者としては、よく響くテノールは美声で、誰もがその声に魅了されました。演技としては、ややコミカルな役柄がいい味を出しました。忘れられない役はいくつもありますが、「風吹にひびく唄」では、戦国時代の根来寺の高僧、頼空の役を担当し、寺の実力者で、たくらみ深い政治家の役を味わい深く演じました。2011年、劇団創立40周年記念公演、「水に浮かぶ城」では戦国時代の太田城の城主、太田左近を演じ、秀吉の水攻めという絶体絶命の状況下でも悲観せず、知恵で事態を切り開いていく城主を演じました。しかし太田城は圧倒的な兵力差でついに降伏、切腹に追い込まれる城主の姿はあわれを感じさせました。

 城野さんはその誠実な人柄で、まわりの人々に頼りにされました。劇団でも、彼の存在は大きな支えで、その発言は重みをもちました。劇団が厳しい時こそ、その存在感は輝きました。

 城野さん…あなたという存在は、なにものにも代え難いものでした。私たちはあなたを失い、立ち直れないほどの深い悲しみのなかにいました。

 しかしいま、また次の公演に向かって歩み始めています。演劇集団和歌山はあなたを決して忘れません。そしてあなたも天国で劇団を見守り続けてください。

トップページへ移動

Copyright 2013 演劇集団和歌山 All rights reserved.
inserted by FC2 system