戦争と子守唄

ねんね根来の覚鑁山でよ
年寄りこいよの
鳩が鳴くよ

根来の子守歌の歌詞には色々なものが残されているが、上にあげた一番の歌詞はどの唄にも含まれているという。私もこの唄は昔から知っているが、「年寄りこいよの鳩が鳴くよ」の意味がどういうことなのかさっぱり分からなかった。おそらく歌いつがれるるうちに間違って伝えられこのような意味不明の詞になったのだろう。「東照寺来いよ」の意味で、秀吉の根来攻めに対して家康の助けを求める意味だという説もあるようだが、私にはどうもこじつけのように思われてならない。根来の子守唄が歌われ出したのは江戸時代の始めの頃と言われている。秀吉の紀州攻めに及ぶ詞もあるから、多分そう考えてよいのだろう。この劇は戦国時代の話だが、この頃にもすでに根来の子守唄の原型となる唄があると考えて許されるだろう、という作者の勝手な考えでこの子守歌を劇の中に導入した。

根来の子守唄もそうだが、日本の子守歌はもの悲しい。もし戦いに行く前に子守唄を聞かされたらたちまち郷愁を感じて戦意などなくなってしまうだろう。日本に限らず、子守唄というものは、母を思い出させ、敵意をそいでしまう。

子守唄は人を育てる唄だ

軍備に力を入れる国が勝利するのか、人を育てることに力を入れる国が勝利するのか。今、日本も重大な岐路に立たされている。ミサイルや核兵器は人や国を滅ぼす力を持っている。しかし、あのソビエト連邦は他国からのミサイル攻撃によって消滅したのでなく、経済の失敗から自滅したではないか。

私の中でやっと根来の子守唄と、戦国時代の戦乱が結びついた。

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