つれづれ思うこと

近所つきあいが薄くなった現在、それぞれの家庭の事情というものはなかなかわからないものだ。今回、舞台になる上杉家も隣近所から見れば、幸せな家庭であっただろう。しかし、その幸せが綱渡りのようなぎりぎりの線で成立していたとしたら?そして、その綱から落ちなければならない時が来たら、人はどのように生きていこうとするのだろうか?
作者の楠本さんは、無声映画・古式捕鯨・歌声喫茶といった一世を風靡しながらも廃れていくものを題材とし、それらに関わる人間模様を描く作品をここ数年発表している。家庭問題に向けられた彼の視点があぶり出したものは何か?舞台から感じていただければ幸いである。

今回の会場「和歌の浦アート・キューブ」は、劇団の稽古場の近くに昨年開館した施設である。場所を貸すだけではなく、文化の創造者を育成する取り組みにも力を入れるなど新しい発想で運営されている。今年の夏には高校生を対象にした演劇ワークショップも開催された。今回の公演をきっかけに、同じ和歌浦に根差すものとして連携していければと思う。

演出 山入 桂吾

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