ストーリー

上杉庄平はスーパーの店長。彼は五年前に新しいマンションを購入した。職場では他店との競合に神経をすり減らす毎日である。妻はPTAの役員や、コーラスの練習など忙しい毎日。2人には年頃の娘と、中学生の息子がいる。家族は何の問題もなく幸せな日々を送っているように見えた。しかし、ある日、息子の晃の部屋で異変が起きた……。

解説

『月の砂漠』は『ドラマの森B2000年版』に収録された作品で、発表された当時の評価は高かったが、未上演の作品である。今回、山入桂吾の演出によって上演が実現した。この作品はまさしく現代の家族の問題に取り組んだ作品で、最近の作者としては異色の作品となった。これまで上演しなかったのは、「あまりにも生々しく受け取られる可能性があり、成功に自信がなかった」と作者は言う。たしかにこの作品には夫婦の愛情の問題、子どもの教育の問題など、まさしく今の問題が織り込まれている。しかし、喜劇的なタッチも取り入れ、観客が身につまされないよう巧みに構成もされている。また子育てという今日的なテーマに、作者が、安易な解決を与えるのでなく、迷いながら、真っ正面から立ち向かっている。その姿がドラマティックである。

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